発達障害 -06 幼稚園

最初の面談で専門機関の受診を促されたその後の幼稚園での様子について書こうと思う。
ちなみに、個人面談は常に最後に組まれ、他の子の4~5倍の時間をかけて行われた。
本気で向き合ってくれていることがよくわかったし、本当にありがたいと思った。
とても、とても、感謝している。

まずは、療育センターに通う前のことから。
担任以外の先生に話かけられる度にパニックになっていると聞いた私は、ひょっとしたら息子は知らない顔を怖がっているのではないかなと考えた。
それで何をしたかというと、入園式で撮った集合写真を拡大して、机に飾ったのだ。
子供たちの集合写真と、先生たちの集合写真を、両方。
すると、息子はしょっちゅうそれを見るようになった。
先生たちの集合写真のほうを特に熱心に見ていたように思う。
で、どうなったか。
パニックを起こさなくなった。
ここまで効果が出るとは思っていなかったので、やった私が一番驚いた。
だって、ただ写真を飾っただけだ。
たったそれだけのことで、彼の幼稚園生活は一変した。
私は専門家じゃないし、当時はまだ診断も受けていないから誰に相談するでもなかったので、パニックがなくなった本当の理由はわからない。
でも、ほんのちょっとの工夫の有る無しが大きな違いを生むということを実感した出来事だった。

次に先生が困っていたのは、切り替えができないことだった。
室内遊び、片付け、外遊び、学習、お昼・・・。
園では決まったスケジュールに沿って生活していくことになるのだが、その切り替えが息子にはできない。
やめさせようとするとモーレツに抗われ、外遊びからはいくら呼んでも帰って来ない。
これを解決したのは療育センターだった。
園でこういうことになっていると相談をしたら、実にあっさりと解決策を示された
「1日の予定を、目に見える形であらかじめ教えてあげてください」
「できれば写真で」「もっと言えば本人の写真がいい」と言うのだ。
園にそれを伝えると、それを満たすスケジュール表がすぐさま作成された。
透明のポケットが取り付けられた縦長の表で、活動内容の札と、その活動をしている最中の息子の写真が、その日の予定に合わせて入れ替えられるようになっている。
息子は自らそのスケジュール表を眺めるようになり、一声かけるだけで作業を終わらせたり外から戻ってきたりできるようになったという。
これには先生もびっくりで、私と同じことを感じてくれた。
「ほんのちょっとの工夫でこんなに違うんですね」と。
また、このスケジュール表は、他の子たちもよく見ていたらしい。
そりゃ、発達障害じゃなくたって今日の予定には興味があるだろうし、写真ならわかりやすいよね。

次の困り事は、読み聞かせなどをしている最中に席を立って別のことを始めてしまったり、みんなで一緒にするべきことに参加しなかったりすることだったが、これについては、それでよしとされることになった
というのも、「こういうときには席に座っていなければならない」と教え込むより、「それが苦手な子もいる」と知ってもらうことのほうが子どもたちには有益だ、と園が判断したからだ。
先生はこう説明したらしい。
「お絵かきが苦手な子もいるよね。かけっこが苦手な子もいるよね。それと同じで、じっとしていることが苦手な子もいるんだよ」「だから、そういうお友達を見たら、苦手なんだなって思ってあげてね」と。
息子は救われただろう。
私も救われた。

それから、息子は教室を飛び出して行方不明になるという迷惑もかけていたのだが、これについても園が対応してくれた。
園は、先生をひとり、巡回要員として配置してくれたのである。
先生は、飛び出してくる息子をキャッチする。
キャッチして、別の部屋へ連れて行く。
連れて行って、気が済むまで他のことをさせてくれる。
息子は、飛び出して捕まっても暴れることなく、職員室でおとなしくお絵かきをするようになった。
先生はいつも、息子の気が済むまで付き合ってくれたらしい。
感謝しかない。

報告を受けたことの中で、なんの手も打たなかったのは弁当給食だ。
息子は、幼稚園での3年間、白いご飯にしか手を付けなかった。
はじめに報告を受けたときは、息子は自宅でも知らない料理や見慣れない形のものは口にしないので「そりゃそうなるか」と思ったが、このままでいいのだろうかと療育センターの担当医に相談すると、「気にしなくていい」と言われてしまったのである。
「そのうち、あれはなんだったのかと思うほど食べるようになりますから」と。
「栄養面は他の2食で補える」「無理に食べさせると心の面でマイナスになる」ということだったので、園にもそれを伝え、残してごめんなさいと謝った。
なお、担当医の予言が現実となったのは、小学2年のときだ。

園ではそんな感じでお世話になりっぱなしだったから、療育手帳の発行時に「こういったお子さんを2人以上受け入れている幼稚園には補助金の制度がある」という説明を聞いたときは、「これだ!」と思った。
これは絶対にもらってもらわなければならない。
園が息子の他にもう1人受け入れているかはわからないが、せめてその制度をお伝えして、うちの療育手帳だけでも役立ててもらわなければ!
個人面談でその話をすると、担任の先生は丁寧にメモをとってくれた。
やがて副園長先生から「申請させていただいてもよろしいでしょうか」と言ってもらえたときには、本当に嬉しかった。
補助額は、年間78万円程度だったと思う。
微々たるもので、巡回先生の人件費にもならないが、数々のご恩に対して他にお返しできるものがなかったから、むしろ私のほうが助かった。

こうして息子は大変幸せな幼稚園生活を送ることができ、心身ともに健やかにのびのびと育ち、明るく元気いっぱいで卒園を迎えた。
とりわけ、心の面で目一杯プラスに振り切った状態で次のステージへと送り出してもらえたことは、どれだけ感謝してもし足りない。
年長時に、今まで一度も参加しなかった運動会の準備体操を、代表として前に出てまでやっている姿を涙なくして見ることはできなかったし、卒園式で、みんなと同じように並んで礼をして証書を受け取れるようになるなんて、入園当初には想像でもできなかった。
なんという成長。なんという喜び。
また、息子への配慮に止まらず、周りの子にも多様性を教えるいい機会と捉えてそれを実践してくれたことは、この国の未来にも繋がることであり、心から称賛したい。
この先の社会で共に生きていく人たちの中に、そういった特性への理解が根付いている人が、少なくともクラスメイトの数だけはいる。
涙が出そうだ。

かくして、息子は最高の状態でもって、小学校へと上がることになった。

つづく。

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