発達障害 -03 気付き

息子が「普通」ではないと気付いたのは、幼稚園の先生だった。
初めての個人面談の時だったと思う。
先生は言いにくそうにしながらも、言うのがこの子のためという信念をもって、園での様子や園側の見解を伝えた上で、専門機関の受診を勧めてきた
私は驚きはしたが、「なんですって!?」とは思わない。
「へえー!」と思った。

このときにはまだわかっていなかったが、あとになって思えば、幼稚園に入る前から「変」はたくさんあった。
しかし、私を含め家族はみんな個性的だし、友人も個性的だし、こういう個性もあるかと思ってさほど気にしなかったのである。

例えば、息子は後追いを一切しなかった。
バイバイをしてみせると、手のひらを自分に向けてバイバイをした。
絵本を読んであげても無反応。
いないいないばあで笑ったこともない。
だっこやスキンシップを喜ぶこともなく、とにかくよく眠った。
同じ銘柄の粉ミルクしか受け付けず、馴染みのない食材はすべて拒絶。
同じ食材でも形が違うと食べなかった。
哺乳瓶の吸い口をストローなどに替えようと試みたときの死闘は忘れない。
お腹が空いても頑として口にしなかったので、結局私が折れた。
感覚過敏なのかと思うと逆に鈍いこともあり、トレーニングパンツを履かせても「気持ち悪い」とは思ってくれず、大でも小でも平然と垂れ流した。
トレーニングパンツなんか何のためにあるんだ!? と、2 日で挫折。
5 枚組で買ったが、うち 3 枚は未使用のままゴミになった。

行動に関しても特殊ではあった。
「どっちがいい?」でどちらかを選ぶことができない。
同じことの繰り返しを飽きることなくやり続ける。
また、記憶の仕方が独特で、形が同じならどんな絵柄の板パズルでもミスなく完成させたり、カルタの裏面の模様を見て表面の文字をすべて言い当てるなど、天才かと勘違いさせられそうになることも多々あった。

しかし基本的には困ることだらけで、いわゆる「ちゃんとしていなければならない場面」でちゃんとしていられたことはない。
健診も参拝も結婚式も、泣きわめいて迷惑をかけた。
走れるようになると、すぐに走っていなくなるようになった。
そうしていつも同じ場所を行ったり来たりして遊んでいる。
店員に捕獲され、カウンターの角で身を縮めて全身を恐怖で震わせていたときはさすがに憐れに思ったが、その反省が活かされることもない。

話を幼稚園に戻す。
先生から聞いた息子の園での様子は、これまでのあれこれを「個性」と捉えていた私に、「このままではいけないのではないか」と思わせるものだった。
一番衝撃的だったのは、手洗い場で蛇口から水を出し、一日中それに触れているという報告だった。
そんな様子は家では見たことがない。
また、担任以外の先生に話しかけられると、パニックになって両手で顔を覆って縮こまったり、接触を恐れて教室や廊下の隅で頭を角に付けて動かなくなってしまったりするという。
異常な事態だ。
さらには、「こちらの話がわかっていないのではないか」と、言葉の発達に関しての不安も伝えられた。
これに関しては、それはあり得ると思った。
なぜなら、この時点(3 歳)で息子がしゃべっていたのは、息子独自の言語であり、家でも息子との会話は成り立っていなかったのだ。

幼稚園の先生は、いわば子供の専門家だ。
その人が「これはおかしい」と思うのであれば、それはおかしいのだと思う。
だが、おかしいことが問題なのではない。
一日中水に触っていたり、部屋の角に頭を付けていたり、そんなのが楽しいわけがない。
問題はそこだ。
せっかく入園したのに、逃避と思えることばかりしている息子が不憫に思えた。
教えてもらえてよかったと心から思った。
息子をその状況から救い出してやらなければならない
しかし「専門機関」とは何なのか?
私は、とりあえずかかりつけ医に相談してみることにした。

つづく。

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発達障害 -02 はじめに

私の息子は発達障害だ。
その中でも、「広汎性発達障害(PDD)」に分類される特性があると診断されている。
とはいえ、今から十数年も前(2008 年頃)のことだ。
今では、その名称も「自閉症スペクトラム障害(ASD)」となったらしい。

発達障害には大きく分けて 3 つの特性がある。

・ 自閉症スペクトラム障害(ASD)
・ 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
・ 学習機能障害(LD)

この 3 つの特性は独立しているわけではないので、複数の特性を併せもっている人もいる。
症状の出方は人それぞれなのだ。
そして、その重さも人によって全然違う。
それゆえ、自分や身近な人の特性を詳しく知ることは、その対処法を学ぶ上でとても重要と言える。
けど、厳密な判定は必要ないと私は思っている。
なぜなら、特性の傾向はスペクトラム、すなわち連続体であり、境界が明確ではないからだ。

まず大事なのは、ざっくりでいいから、特性について知っておくこと。
そうすれば、気付ける。
気付ければ、学べる。
学べれば、対処できる。
対処できれば問題が改善されるし、場合によっては回避できる。

例えば、自分の子供が発達障害の疑いをかけられたなら、プラスに捉えるべきだ。
なぜなら、その先の生活は、それまでよりもずっと楽になる。
対処できるようになるから。
施設などで指摘をされると「障害者扱いされた」と怒り出す親もいるらしいが、愚かなことだ。
子供の幸せを願うなら、一刻も早く対処してあげなければならない。
最も恐ろしいのは、周りとうまくいかないことで起こる二次被害なのだから。

ちなみに、うちの息子は広汎性発達障害(PDD)ではあるが、学習機能障害(LD)と 注意欠陥・多動性障害(ADHD)はない、と言われた。
しかし親からすると、ADHD がないとは思えない。
診断なんてそんなものだ。
精密な検査を受けて、どの数値がどうだのこうだの、前回と比べてどうだのこうだの、そんなものは参考にしかならない。
それより、目の前の子の不安定さと向き合い続けるべきである。
「検査で ADHD がないと出たから、そこは大丈夫」と思い込むことに、なんの意味があるだろう。
だって、スペクトラムだ。
日々は、「そうきたか」「そうなるか」の繰り返しだ。
一つ一つ手探りで対処していく必要があるのだと思う。

余談だが、実はたくさんいるであろう、グレーあたりを彷徨っていながら発達障害であることを認めたがらない人たち、そしてそれを取り上げるメディアは、「障害」という言葉を意識しすぎていると思う。
でもそれ、個性だから。
いわゆる「変わり者」ってだけ。
そして、そういう人たちこそが時代を開拓してきたのだということを知るべき。
人と違うということは、宝なのだよ。
悩むより慣れろ。
苦しむより楽しめ。
私はいつもそう思っている。

つづく。

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発達障害 -01 ★必読★注意点

息子の発達障害について記しておくことにした。
それを公開するにあたり、2 つのことを断っておきたい。

ひとつは、私が書くのは、白でも黒でもない、グレーと呼ばれる位置にいる自分の子供のことだけだということ。
私は、私が経験してきたことだけを書く。
どんなことがあり、どう対処してきたのか。
何を思ったのか。
重度の障害でお悩みの方たちからすれば、薄っぺらい内容だろうし、配慮にも欠けているだろう。
けど、これは私の記録であって指南書ではない。
ゆえに、その点はお許し願いたい。

つぎに、私は闘うタイプの人間だということ。
私は、「発達障害だから大目にみてほしい」と思ったことはないし、「発達障害だから仕方がない」と諦めたこともない。
事態の改善のためなら、何とだって闘う。
その心意気に共感できない人は、読まないほうがいい。
私も、事なかれ主義や他力本願な体験記には興味がないので。

なお、記すのは幼少期から中学時代までのことだけだ(おまけでその後のこともちょっとだけ)。
なぜなら、彼は今や、別段珍しくもない単なる「変わったヤツ」でしかなく、これといって記すべきことが見当たらないからである。

以上。
ご理解いただける方は、先へお進みください。

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