友達の言葉 -07

気持ちが不安定になる年頃ってのがあるんだろう。
グラグラしていて、過敏で、脆くて、何かが変なのだ。どうもおかしい。けどどうにもできない。
その頃のことで真っ先に思い出すのは、自分がそういう状態になったという事実だ。感じたツラさではない。原因に至っては、「なんでそうなったんだっけ?」と考えてようやく思い出す。
つまり、そういうことなんだと思う。若き日の私は、冷静な心や大人の目で顧みれば、何てこたぁない大したこっちゃないことで、とことん墜ちたのだ。

具体的にどういう状態になっていたかと言うと、死んでしまいたくなっていた
高校3年生の秋である。
進路を決めなければならない時期で。でも私は何にも興味がなくて。
何にもないのに「何か出せ」「何か選べ」と迫られ続ける日々は、ただただツラかった。
今なら外野の追い立てなどスルー一択だが、当時の私はまだ若かったし今よりは素直でもあったので、それができなんだ。
それゆえ、ツラさは劣等感へと変わっていったのだと思う。
「自分には何もない」「存在価値がない」「生きていても仕方がない」と。

その日の夕方、私は自室のベッドで体育座りをしていた。
「私なんかいらない」「もう死んでしまおう」
そう決めて涙を流していたとき、階下から親が「あなた宛ての電話だから2階で取って」と言ってきた。
部活以外で顔を合わせることのない同期の男友達からのようだった。
先に言っておくが、恋愛要素は一切無い。
私はさすがに驚いて、子機を自室に持ち込んだ。
「どうしたの?」そう訊くと、彼は「用事があるわけじゃないんだけど」と答え、こう言った。

「どうしてるかなって、ふと思ったんだ」

瞬時に、ボロボロと涙が溢れた。
どうって、今、私は死のうって思って・・・そんなときにあなたは、ふと私のことが頭に浮かんだって言うの・・・?
彼は続ける。
「そしたら、電話をかけてた」
私は涙が止まらない。何も返せない。いや、何もしていないとかぼーっとしてたとか言ったかもしれない。でも覚えていない。
彼は、話題を振ることも詮索することもせず、「声が聞けて安心した」と笑ったあと、「また部活で」と言って電話を切った。

このタイミングで。こんなタイミングで。こんなことがあるのか。こんなことがあっていいのか。嘘のようだ。嘘のようだ。
私は電話を切ったあとで、声を漏らして泣いた。

今でも、何の力が働いたのかと不思議でならない。
私のこれまでの人生の中で、最も奇跡に近い出来事だったと言える。
この電話がなかったら、私は突発的に取り返しのつかない行動に出ていてもおかしくはなかった。
にもかかわらず、たった一言で救われてしまった
「自分なんか必要ない」? 「生きてたって意味ない」?
何を言う。
私のことをふと思い浮かべてくれる人がいるじゃないか。
私の声を聞くためだけに電話を掛けてくれる人がいるじゃないか。
親兄弟や親戚と違って、私の存在を気に掛けることが〝当然ではない人〟が私のことを気にしてくれたという現実は、その時の私にとって、とても、とても、とても大きかった。

「あの時助かったんだよ~」なんて話を、彼にしたことはない。
彼からの電話も、それが最初で最後だった。今では居場所さえわからない。
ひょっとしたら彼は、私に電話をしたことも覚えていないのではないかな。
もしそうであるなら、いつあるとも知れない同窓の席で、「そんなことがあったんだよ」と言ってやりたい。
そして酔いに任せて、いっぱい、いっぱい、いっぱい感謝を伝えたい。

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