発達障害 -04 受診

幼稚園で指摘をされたものの、「専門機関」がわからない。
私はとりあえず、かかりつけの小児科医に相談した。
息子が乳児の頃からお世話になっているので、説明もしやすいと思ったのだ。

幼稚園でそのような指摘を受けたことを話すと、医者も看護師も「ああ」という反応をした。
その反応に、私こそ「ああ」と思った。
それっぽいと思ってはいても、指摘はしてくれなかったんだなぁ・・・。
なにゆえそう思ったのかについて訊きはしなかったが、思い当たることはある。
抱っこされている状態から突然大きく反り返って医者の机に後頭部を打ち付けそうになったり、注射の際にひどく暴れて大人が 3 人で押さえつけなければならなかったり、専門知識がある人から見れば、あれもこれも、それっぽかったのだろう。
馴染みの小児科医は、「そういう分野に詳しい先生が診察をする日があるから、その日にもう一度来るといい」と言った。

後日、再び同じ小児科を受診。
紹介された「詳しい先生」と話をする。
とはいえ、その人も「詳しい」だけで、いわゆる「専門家」ではない。
結局、「自分の知り合いに優秀な人がいる。そのクリニックに話を通しておくから診てもらうといい」と、専門医を紹介されただけだった。
とはいえ、どこへ行ったらいいかまるでわからなかったのでありがたい。
私は、言われるがまま、その個人クリニックへ行くことにした。

専門医を訪ねた日のことは忘れない。
土砂降りの雨の日だった。
最寄り駅に着いたときにはずぶ濡れで、すでに気分は最悪だ。
そこから 1 時間ほど電車に揺られ、ビルの 2 Fだったか、少し高い位置にあるクリニックに入った。
そのようなところを受診するのは初めてなので、仕組みも何もわからない。
待合室に成人男性が一人いるから、小児専門というわけではないらしい。
案内には、「心療内科・精神科」と書いてある。
幼稚園の先生が言った「専門機関」というのは、ここで合っているのかな・・・。
通された部屋は、診察室としてはかなり広い部屋だった。
壁一面の大きな窓には、足元までロールカーテンが下ろされている。
中央には長机があり、先生は壁側の席に座っていた。
私と息子は窓側の席を促され、先生と向かい合って座った。
専門医は「様子を見させてください」と言って、息子にあれこれ話しかけてくる。
息子はそれを無視。
先ほどまでそんなでもなかったはずだが、完全に機嫌が悪くなっている。
一旦こうなると、息子は何にも反応を示さなくなり、ひとりの世界に閉じこもってしまう。
様子を見るどころではないのでは・・・。
専門医は絵本を見せたり、興味を引くようなことを言ったりするが、息子はついには席を離れて窓に身を寄せ、そこから動かなくなった。
そうして、ただ、ロールカーテンのわずかな隙間から外を見下ろしている。
近寄ってあれこれ見せようとしても見向きもしない。
好きなトーマスの話やグッズをチラつかせても反応さえしない。
すっかり塞ぎ込んでしまった。
専門医は、その様子もじっと見ている。
「いつもこんな感じですか?」と訊かれ、「そうです。こうなっちゃうと戻りません」と答えると、専門医は小さな紙を取り出し、私に向かって話し始めた。
広汎性発達障害の疑いがあります。私のところではその診断をすることはできないので、療育センターで診てもらってください」
・・・うん??
知らない言葉が複数出てきて、何だかわからない。
私は、「広汎性発達障害」「療育センター」とメモ書きされた紙を渡された。
専門医は、「疑い」とは言ったが、「おそらく間違いない」とも言った。
「これまでに定期健診などで指摘されたことはありませんか?」
一度もなかった。

ここで定期健診でのことを少し書いておきたい。
区役所などで行われる乳幼児健診(4 ヶ月児、1 歳 6 ヶ月児、3 歳児)には、成長の節目に子供の成長や発達を確認して子育てを支援する、という目的があるらしい。
健診時、うちの息子は服を脱ぐのも着るのも嫌がって大泣きし、医者の前でも暴れて診察させない、身長も測らせない、などなど大迷惑だったのだが、発達障害は見逃されてしまった
それなのに、どういうわけか私の様子(冷淡さ?)には過剰に反応し、虐待のおそれがあるとでも思ったのか「ケアをしたい」などと言ってきた。
社交性のない私は心の底からお断りしたのだが、どうしても一度訪問すると言ってきかない。
それで結局来てしまったわけだが、別段うちにおかしなところはなく、私と息子もキャイキャイやっていたため、担当者はニコニコと帰っていった。
その際も、変な遊びや妙な反応など、息子は発達障害の特性をチラつかせていたのであるが、そこにはやはり気付いてもらえなかった。
はて、乳幼児健診の目的とは何であったか・・・。
親の様子を気にするなとは言わないが、まず気にするのは子供の様子であってほしかったと思う。

話を戻す。
診断名を確定させるのはここではないと言うのなら、ここで訊くべきはその病名のなんたるかより、「療育センター」が何であるかだ。
専門医はざっくりと説明した。
療育センターとは、障害のある子供の診療や支援などをする公的機関である。そこで正式に診断してもらって、必要なサポートを受けていくことをお勧めする。ただし、療育センターの予約は非常に取りづらい。数ヶ月は先になってしまうだろうから、すぐに動いたほうがいい。
私の頭の中は謎だらけだったが、つまりここも、幼稚園の先生が言った「専門機関」ではなかったということなんだなと思った。
随分遠回りをしているような気がする。
しかし、無駄だったということもない。
この遠回りで私は「療育センター」を知ったし、その療育センターにおいても、他機関での診断があったことで話がスムーズに進んだからだ。

家に帰り、自宅の住所がどの療育センターに属するかを調べ、電話をかけた。
聞いていた通り、初診の予約が取れたのは数ヶ月先だったと記憶している。

つづく。

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