昨年9月に日本エディタースクールの「校正技能検定試験(中級)」に謎に合格したその勢いで、翌10月に、校正実務講座の「校正士」も受けてみたところ――
そちらも受かっちゃいました。
嬉しさより、まず思ったのは「長かった・・・」ってこと。
なぜなら、これは四半世紀前に受けた通信講座の資格なんだよ。
ガッチガチの理系大学に通いながら校正に興味をもったのは、有志の学生組織(情報冊子編集委員会)に所属していたからだろう。けど、思い返せば私は、幼い頃から新聞係だの広報係だのをやりたがるタイプの子であった。そういった分野に特化した資格があると知って、興味が湧かないわけがない。むしろ不自然だったのは、興味もないのに興味のない大学に進んだことのほうである。
それは、親の夢や願望や固定概念といったつまらぬ理由で、親が子の挑戦を阻み、可能性を奪い、未来を狭めた、悍ましい過去だ。私の親は、己が成し得なかったことを子が成せれば満足だったのだろうか。そのために、その子が自分の人生を「成し得なかった」と悔いることになってもか。
・・・話が逸れた。
校正士の資格試験は在宅で行われる。送られてきた問題兼解答用紙を期日までに送り返す仕組みだ。「原稿引き合わせ(縦組み)」「素読み(縦組み・横組み)」「筆記(漢字)」の計4問。10日間くらいだったかなぁ。
とはいえ、相応のボリュームがあった。加えて、在宅なので、いくらでも調べられてしまう。つまり、やろうと思えばどこまででもやることができるわけだ。なんせ、「これはやらんでいいですよ」といった甘いお達しがひとつもない。「ひょっとして事実確認(ファクトチェック)までしなきゃならんのか!?」と、私は震え上がった。
というのも、何を隠そう、私はこのファクトチェックが嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで・・・!!
校正の資格に挑戦する前から、校正を生業にするつもりは元々なかったのだが、そんな作業があると知って、それは揺るぎない意思となった。そんなもん、それを書きたい人が自分の責任で調べなさいよ!? もしくは編集者とか、書かせたい人が調べるべきでしょ!? 参考文献との正誤をチェックするならまだしも、何で調べたのかもわからんことを、もっと言えば調べたのかさえわからんことを、ゼロから自力で調べ上げ、場合によっては国会図書館にまで行って原本を確認するなんて作業は、校正の仕事じゃないだろ!! 少なくとも、25年前のテキストにそんな作業は載っていなかったよ! てか、それは「校閲」ではないのか!? しかし・・・
エディタースクールの講師によると、そこまで求められているのが、今の校正であるらしい。正直、辟易した。なんてこったい・・・。
だが、それが現在の常識であれ、そんな作業は、人の世話だの尻拭いだのが死ぬほど嫌いな私には到底不可能である。
というわけで、作業に関する細かな指示がなかったことを逆手にとって、事実確認はせずに提出した。で、合格だ。
ほっとした。
この「ほっ」は、合格したことに対してというより、実際の仕事を想定した問題であったにも関わらず、事実確認が求められなかったことに対する「ほっ」である。
「校正」の実状は果たしてどちらなのか・・・?
それを私が知ることはない。
なお、合格証書などと一緒に事務的な解答例が同封されていたが、驚くほどシンプルなことしか挙げられていなかった。
なんだ・・・日数あったから、みっちりガッツリやったのに・・・。そうかい、そんな感じでよかったのかい・・・。
だから、たぶん難易度はさほど高くない試験だったのだと思う。無論、明らかな間違いに気付く目は必要だけど、それ以外の部分については、赤と鉛筆の書き分けが出来ていればいいってことだったのかなぁといった感じ。
にもかかわらず、届いた封筒には、「すんげー難しい試験を突破したこの人を自信をもって推薦しまっす!」といった主旨の、就職活動用と思しき書面が同封されていた。こんなん恥ずかしくて使えるかよおおお!?
何はともあれ、すっきりした。
長い間中途半端なままだった興味を、ちゃんと形にできたことは、たとえこの先それを役立てることがなかったとしても、私の自信になる。
「成した」私はきっと、これまでよりも前向きに、堂々と生きていけるはずだ。たぶん。
学び直せてよかったと、心から思う。
なお、スポンサー(旦那)に合格を報告したら、
「次は何の資格を取るの?」
と言われた。
なんだそりゃ? 資格マニアじゃないんだからさぁ。
そう言って笑って、
「取らんよ」
と答えたら、旦那は
「そうなの?」
と、意外そうな顔をした。
そういえば、大昔に私は、「本当は進みたい道があった」と旦那(当時は彼氏)に打ち明けて泣いてしまったことがある。そのとき、この人は「オレが行かせてやる」と言っていたっけ。
あれはデカかったんだよなぁ・・・。
別に、本気でそれを当てにしていたわけではないし、それがゆえに結婚を決めたわけでもないけどさ。
でも、ひょっとしたら、旦那はそれを覚えてくれていたのかもしれない・・・?
・・・そんなわけないか。